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千葉地方裁判所 昭和58年(わ)1262号 判決

主文

被告人上田満を懲役二年及び罰金五万円に、被告人佐藤澄男を懲役一〇月に処する。

未決勾留日数中、被告人上田満に対し四五〇日をその懲役刑に、被告人佐藤澄男に対し一八〇日をその刑に算入する。

被告人上田満においてその罰金を完納することができないときは、金二五〇〇円を一日に換算した期間、同被告人を労役場に留置する。

被告人佐藤澄男に対し、この裁判の確定した日から五年間右刑の執行を猶予する。

訴訟費用のうち(以下略)

理由

(罪となるべき事実)

第一  被告人上田満は、

一  昭和五三年九月一二日午前一〇時五八分ころ、千葉県印旛郡印西町草深蛭沼七六番一地内の、現地番同町高花三丁目一〇九番の二〇先から同町高花三丁目一一四番の二先に至る道路上において、氏名不詳者から窃取してきた山内久輝所有の普通乗用自動車一台(時価約二五万円相当)を、それが賍物であることを知りながら運転して運搬し、もつて賍物を運搬し

二  昭和五八年一〇月二一日午前七時ころ、千葉県松戸市大金平二丁目六八番地の一所在のマンシヨン第七松戸二〇二号室玄関ドア付近において、千葉県警察本部警備部警備第二課所属警部中村勇が捜索差押許可状に基づき同室を捜索しようとした際、左肩で、同警部に対し、その腹部から胸部にかけて及びその腹部にと二回体当りをする暴行を加え、もつて、同警部の右職務の執行を妨害し

第二  被告人佐藤澄男は、前記第一の二記載の日時ころ、前記二〇二号室玄関土間付近において、前記警備第二課所属警部中林博明が捜索差押許可状に基づき同室を捜索しようとした際、左肩から、同警部に対し、その右胸に二回体当りをする暴行を加え、もつて、同警部の右職務の執行を妨害し

たものである。

(証拠の標目)(略)

(争点に対する判断)

第一~第四、一(略)

第四、二 職務執行の適法性について

被告人、弁護人らは、本件は、警察官らが捜索差押を口実に、はじめから、計画的に被告人両名を逮捕・勾留する目的で本件二〇二号室に突入し、被告人両名を拘束したものであつて、警察官らは、そのような職務について、具体的職務権限は勿論、一般的職務権限も有していなかつたうえ、右職務は、その根拠とされた本件捜索差押許可状が一般探索的なものであり、それを被告人両名に示さなかつたなど、法律上重要な条件、方式を欠くものであると主張して、警察官らの右職務執行の適法性を争うけれども、本件捜索差押許可状が発付され、その執行のために中村警部とそれを携帯した中林警部が、当日、本件二〇二号室内に入つて、捜索しようとし、「警察の者だ。捜索に来た。」と被告人両名に告げた経過は、前記認定のとおりであつて、右両警部が、本件捜索差押許可状に基づいて行つた右職務について一般的、かつ具体的職務権限を有していたことは明らかである。また、本件捜索差押許可状の発付に所論のような違法があつたとは認められず、中林警部が本件捜索差押許可状を被告人両名に示さなかつたことについても、前判示の具体的状況のもとにおいてはその手続等において欠けるところはなかつたものと認められる。その他、所論の指摘する諸点を検討しても、中村、中林の両警部の行つた右職務の適法性に欠けるところはなかつたものと認められる。

被告人、弁護人らの右主張は採用できない。

三 以上のとおりであつて、被告人両名に対する公務執行妨害罪については、その証明十分と認められる。

よつて、主文のとおり判決する。

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